El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

日本の歴史(8)蒙古襲来

元寇の裏で進むさまざまな社会の変化

鎌倉時代後半。元寇の裏で進むさまざまな社会の変化=煮詰まり感。

  1. 大陸から大量の銅銭が輸入され現物経済から貨幣経済への転換がすすむのに伴い、高利貸し(僧兵がやっていること多いという)が誕生、贅沢生活で土地を失う御家人が出てくる。→徳政令へ
  2. 天皇家の両統迭立が発生したメカニズムが細かく解説されている。親子か兄弟かでもめて分裂していくという根底は同じ。そこに荘園の相続がからむ。娘に相続させて避難させておくという手法もおもしろい。→やがて後醍醐天皇へ
  3. 庶民レベルでも分割相続では所領が細かくなりすぎて成り立たない事態になり惣領制が崩壊し長子相続へと移行。
  4. 土地の所有権者(領主)と徴税権者(地頭)と農民、それぞれの言い分。悪党の出現。
  5. 鎌倉仏教第二波、一遍(時宗)の踊念仏からのなぜか一向宗(真宗)に絡めとられていく。

まあ、北条氏の優位性が確立したゆえの格差の拡大の時代。貧困側には貧困側の対策があり、それが社会不安の要素にもなる。そうして、ついには社会もガラガラポンをもとめる。難産の末に樹立し維持してきた鎌倉幕府も150年で唐突に滅亡する。

1297年の永仁の徳政令に対する著者コメントがまるでコロナ禍の現実を描写しているようで、50年前に700年前のことについて書かれたとは思えないほどなので以下に引用しておく・・・

名目は国家社会のためでも、実は特定の者だけが利益をうけて、他の多数の者が基本的な権利まで制限されてしまう政策は、中世ばかりではなくこんにちでもないとは言えまい。幕府の徳政令とはそういう性質のものである。(P381)

この後、建武の新政から南北朝と太平記の時代になっていくのだが、30年前の「太平記」で足利尊氏(真田広之)の子を産む藤夜叉を演じた宮沢りえが、今回の「鎌倉殿の13人」では北条時政の後妻・りくを演じる。息の長い女優人生に感服。