El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

ジョージ・オーウェル 「人間らしさ」への讃歌

1984」の世界をひた走る中国

動物農場」「1984」を書いたオーウェルの簡潔にして要を得た評伝。大英帝国の時代からスペイン内戦、ナチスドイツ、ソ連プロレタリア独裁と、時代時代にあらわれる、「人間らしさ」からかけ離れた現実をひねりの効いた文章で批判し続け、行動してきたオーウェルの人生(46年)がよくわかる。

Decency(人間らしさ、品性)を至上のものと考えればたとえ非効率でドタバタした感染症対策しかできなくても、やはり民主主義を選びたい。

施政者にとって都合がよく、何をやるにも高効率であることをめざせばいきつく先は全体主義オーウェルの時代から、全体主義国家社会主義ナチス)やらプロレタリア独裁やら化粧を変えて登場してきたが、目下のところ中国は明らかにプロレタリア独裁から変質した国家社会主義国家。その上、そのやり方に最近は自信まで持っている。

香港、ウイグル自治区、台湾・・・全体主義の波にのまれていくのだろうか。日本も含め過去の全体主義国家がみな破綻したことだけが一縷の望みではある。

オーウェルの人生をたどることで、現在のさまざまな危機をも感じさせる。