El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

医者は患者の何をみているか

かなりポエム、期待を裏切る

「プロ診断医の思考」というサブタイトルだけど・・・この本を読んだ一般人は、プロ診断医の思考方法は、プロ診断医、少なくとも医師にしかわからないだろうと思うのではないか。プロはシロウトとは違うんだよ、こんなふうにも違うし、あんなふうにも違う、だけど違うって言ってもそれさえきっとシロウトにはわからないよね・・・と言っているような。

因数分解で一般人は最大公約数レベルで考え、プロ診断医は最小公倍数レベルで考える・・・みたいな比喩に始まり、延々と続く独特のレトリックで読むのが大変。編集者がこの本の内容を本当に理解しているのか疑問だ。

例えていえば、スペイン語が分からない人に「あなたはスペイン語がわからない」とスペイン語で言っているような本。

同じ著者の「仮病の見抜き方」は、症例豊富でそれなりに面白かったが、今回の本を読んで考えてみると「仮病・・」にも確かにポエムっぽい部分があったな。今回の本は終始、哲学的な診断学論で誰を対象語るのか不明瞭・・・残念。

どんな分野でもプロゾーンになると、白黒つけられない、確率論的、両論併記、是々非々などなど、表現方法はいろいろあるが、グレーゾーンをうまくさばく力があるのがプロということなのではないか。