El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

ブックガイド(2)難病Xである確率は?

——難病Xである確率は?——

気楽に読んで査定力アップ!ブックレビュアーのドクター・ホンタナです。2回目は「ベイズの定理」、いまやこれなしでは査定できませんよね(?)。人間ドックでさまざまな検査がやられるようになって、例えば抗p53抗体やCYFRA(シフラ)、古いところではリウマチ因子や抗核抗体、これらが陽性のときの判断に困っていませんか。これまでの疫学的な考え方でも、陽性、偽陽性、尤度ということばを使って解説されてきましたが、もっと数学的に表現しようと思えば「ベイズの定理」を使うのが早道です。
  (問題)1万人に1人が発病するようなある難病X。Xの最新の診断法AではXの患者は100%が検査で陽性になり、Xでない場合の偽陽性率は2%・・とします。人間ドックでAの検査を受けて陽性だった人がXである確率は?
 (答)0.5%。(直感よりはだいぶ低いのではないでしょうか)

このA陽性の被保険者をひきうけるかどうかはこの0.5%をどう考えるかということになります。この難病Xの問題にしても有名なモンティー・ホール問題にしても人間の直感にはなんとなくしっくりこないのがおもしろいところです。そこでしっくり納得するために「ベイズの定理」です。ただ、本来しっくりこないだけに数学的な本はわかりにくい。そこで今回紹介するのがマンガの豊富な「図解・ベイズ統計「超」入門」です。これ一冊とにかく読んでください。99%理解できます(偽理解率5%)・・・。
世の中、唾液や血液1滴で数十種類のがんがわかる、なんて診断法があふれていますが、スクリーニング検査で偽陽性率が高ければ(実際高そうですが)被験者を不安にするだけで百害あって一利なしです。査定者も難病Xの1%以下の可能性にビビッて、バンバン謝絶していませんか?マンガでいいですから、「ベイズの定理」勉強しましょう。ベイズの定理をネタにつかった垣根涼介の小説「光秀の定理」(角川文庫)を事前に読むと事前興味確率が高まりそうです。 (by 査定職人 ドクター・ホンタナ, 2017年7月)