El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

八ヶ岳南麓から

なかなかオシャレな大人の絵本

「フェミニズム」「おひとりさまの老後」で著名な元東大教授の上野千鶴子さん。雰囲気をガラリと変えて彼女が20数年をかけて築き上げてきた八ヶ岳南麓での暮らしを短いエッセイ24本にまとめました。24編それぞれに山口はるみさんのイラストがついて、装丁も紙質もオシャレに仕上がっています。大切に少しずつ読みたくなる。

東京脱出の2拠点生活から完全移住、そんなプロセスの予習にもなりますね。八ヶ岳南麓はブームでもあるらしく、定年後に移住する人も多いようです。そんな移住者も歳をとれば「おふたりさま」が「おひとりさま」になり、最期を迎える時がくる。上野先生ですから、もちろんその話題も書かれています。

移住してきたリタイア医師や看護師がコミュニティの中で診療所や訪問介護のしくみを作っていくという話は「なるほど」と。

ぼく自身は神戸に移住してきて、環境としてやや都会的ではありますが、リタイア医師が移住先で高齢者医療・介護に携わるという意味では、八ヶ岳南麓の医師と近いかもしれません。まあ、人間相手ですから都会的な世知辛い部分もありますが、たぶん八ヶ岳南麓でもそれはおなじでしょうね。