El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

日本人にとって美しさとは何か

日本礼賛は気にかかるけれど・・・

高階秀爾(たかしな・しゅうじ)氏が日本の美術や工芸、建築の特色・西洋との違いをいろいろな角度から取り上げて書いた文章を集めたもの。ホントかな?という話もあるが概ね的を射ており勉強になる。

文字と絵が渾然一体となった琳派の絵や美術品から、現代の絵文字文化につながる。漢字+かな文字 つまり、表意文字と表音文字の絶妙な組み合わせ。

屋根文化 (日本)VS 壁文化(西洋)。屋根のそり、軒下などは、木材という素材の潤沢さと自然災害が多い風土に由来か。

非遠近法的視点で描かれる絵は、描かれる対象目線(日本) VS 画家目線(西洋)とあるが、これは少し?省略の美については、確かに日本的。文学では本歌取りや季語など日本独特の省略のためのツールがあり、その文学や文章が文字として組み込まれることで美術品にも省略可能性が出てくる。例えば、光琳の「八つ橋」の絵はそこに在原業平の姿や歌が立ち上るような仕掛けになっている。そこは西洋ではどうなのか?そのあたりに踏み込んでほしかった。

状況の美(日本) VS 実体の美(西洋)という話もわかるけれど本当なのだろうか?

「日本の美」に関する文章は、全体に日本礼賛的な空気がただようのが気になるが、気楽な美術エッセーとしては面白い。また、それよりも芭蕉や蕪村の俳諧がらみの文章は意外に味があり、蕪村の臨終の様子など、高階先生の懐の深さを感じる。