El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

牧野式高音質生活のすゝめ

マニアじゃなくても参考になる

ごくごく一般的な音楽リスナーに過ぎないけれど、音楽サブスクが高音質化してきて、せっかくだからそれに見合った機材で聴きたいということになる。一方で、カセットテープやMDなどがあっという間に陳腐化するのを見てきた世代としては、やたらに先進的なものに投資する気にもなれない。

この牧野由幸さんが漫画を描き、かつ自分のオーディオ遍歴を語るシリーズはほとんど読んでいる。牧野さんは1958年生まれとほぼ同年代なので、時代背景もよくわかる。

オーディオファイル(=Audiophile:いわゆるオーディオ好きの人たち)の今は「ハイレゾ・ストリーミングをどう聴くか」と「本格的に復活してきたレコードをどう聴くか」と「映像を含めた多チャンネル化をどう聴くか」になると思うのだが、それぞれにハイエンド機器を準備するととんでもない金額になる。

この本は、ハイレゾ・ストリーミングの直前の状況(この本の執筆は2013年ころ)でSACDやBlu-ray Audioとそれらによるサラウンドサウンドが熱く語られている。

手元にそれなりの2チャンネルオーディオ環境があれば、そこにユニバーサル・プレーヤー、AVアンプ、追加のスピーカーを追加すれば牧野さんの追体験ができる。一方で、その後、多チャンネル・ストリーミング化は起こりそうもないので、ストリーミング方向にすすんでしまった私は、多チャンネル・サラウンドに憧れつつもそこに進むのに躊躇している状況だ。