El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

三体

超絶の科学リアリティで繰り広げられる、ディストピア的スペース・オペラ

Audibleで聴きました(17時間31分)。2019年の発刊以来SF界を驚かし続ける中国版スペースオペラ「三体」、なんとなく中国人名がしんどくて読んでいなかったが、定額聴き放題のAudibleに入ったので8月の後半のウォーキングで聴きとおすことができた。

三つの太陽によって周期的な滅亡と復活を繰り返すアルファ・ケンタウリの三体世界。人類が初めて接触できた知的異星人が三体世界人だった。そして、文化大革命で未来に希望を持てない中国人女性科学者が、太陽放射を利用して宇宙にメッセージを発信したことですべてが動き出す。「こんな人類世界を正しく導いて・・・」と。

三体世界に比べれば、なんとやさしい自然に満ち溢れ穏やかな地球。三体人は「正しく導いてくれるはずもなく」、当然、地球征服を企てる。4.5光年の距離を450年かけて地球に向かう。

女性科学者はじめ三体世界を救世主のように崇める組織、その組織が作ったVR三体世界体験ゲーム。そのゲームの中で繰り広げられる喧々諤々の哲学問答。ペダンチックな部分もあるが、それもまた味わい。

ああ、膨大な続編が待っている・・・