——冬休みに読みたい三冊——
気楽に読める一般向けの本で、アンダーライティングに役立つ最新の医学知識をゲットしよう。そんなコンセプトでブックガイドしています。査定歴20年の自称査定職人ドクター・ホンタナ(ペンネーム)です。
今年(2017年)最後のブックガイドになりました。気楽な本を選んでいるとはいえ、医学がからんでいるものばかり。でも保険って社会的側面も大きいですよね。そこで今回は年末スペシャル、医学から離れました。・・・ここ半年の間に読んだ医学系ではない本の中から、一見保険とは無関係に見えますが意外に仕事に役立ちそうという3冊を選んでみました。
まずは橘玲「「読まなくてもいい本」の読書案内」。これはおすすめです。複雑系・進化論・ゲーム理論・脳科学・功利主義の分野で読むべき入門書を示しつつ、トンデモ本を一刀両断。ネット社会以前の学問、とくにポストモダンとか精神分析とか・・・ほとんど陳腐化してしまいました。ネット社会以降の日本の文系学問(大学でやっている法学・経済学・文学・教育学 etc.)はすべからく古いパラダイムから脱出できず、文系大学の廃止は当然・・・。まあ痛快ではあります。アンダーライティング部門で科学的な思考をしても、保険会社って、ま、古い文系パラダイムが主流だからな~というグチをいいがちですが、そんな人も溜飲がさがるという一冊。因みにドクター・ホンタナのブックガイドは、読まなくてもいい本は「まあまあ」とか「~には役立つ」程度の表現を使っています。読むべき本は絶賛していますので、ご参考に。
2冊目は中川毅「人類と気候の10万年史」。気候と保険・・はかなり離れていそうですが・・・。成長トレンドにせよ下向トレンドにせよ、普段の日常は(保険業にせよ、人生にせよ)ゆっくりと変動するトレンドを前提にしていますよね。ところが、予測できない激変があってガラガラポンになり、またそこからトレンドになる。このガラガラポンをPhase change(相転移)と呼びます。特に、気候学では、温暖化・寒冷化のPhase changeのしくみがかなり詳しく明らかになっています。われわれのアンダーライティング環境もいつPhase changeに見舞われるかわかりません。トレンドを追うだけではなくPhase changeに備える、そんな視点の重要性を教えてくれる、これも絶賛の一冊です。
最後はちょっとタイトルは微妙ですが、片山杜秀「国の死に方」。この本が保険と関係あるとは思わずに読んでいたのですが、関東大震災の時の保険金不払問題(地震免責)が詳しく書かれていて驚きでした。このときのさまざまの出来事が保険金不払い問題とからんでいたらしいです。地震による火災ではなく放火だという強弁などなど。結局政治主導で約款を超えた支払を強要されたらしいです・・・いやあ、勉強になりますよ。「歴史は繰り返す。一度目は悲劇として、二度目は喜劇として(マルクス)」ですね。
年末年始は5連休以上の会社が多いのではないでしょうか。この3冊、こたつでぜひ読んでみてください。それではみなさんよいお年を。(査定職人 ホンタナ Dr. Fontana 2017年12月)