El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

男と女 人生最良の日々

Les plus belles années d'une vie(人生最良の日々を、まだ生きてはいない)

「男と女」の52年後・・・

♪ シャ・バ・ダ、ダバダバダ、ダバダバダ のフランシス・レイの音楽でおなじみの懐かしい映画「男と女」。1966年制作で日本では1970年代にはテレビの月曜ロードショーで放映された・・名作ですが、そんな遠い日の映画。妻を亡くしたレーサー(ジャン=ルイ・トランティニャン)と夫を亡くした女(アヌーク・エーメ)、どちらも子供一人あり、の恋。撮影当時、トランティニャンは36歳、アヌーク・エーメは34歳。疾走する車や、ノルマンディーの海岸など印象的な映像ではありました。

今回観たのは、この「男と女」の続編であり、「男と女」の印象的な場面を回想のように使いながら二人の52年後を描いた「男と女 人生最良の日々」。 監督のクロード・ルルーシュをはじめ、主演のアヌーク・エーメとジャン=ルイ・トランティニャン、音楽のフランシス・レイなど、当時のスタッフとキャストが再結集しています(フランシス・レイは公開前の2018年死去)。

2019年の公開時点でトランティニャン89歳、アヌーク・エーメ87歳。監督のクロード・ルルーシュ82歳というから・・・みんな長生きになりました。結ばれなかった恋から52年後、老人ホームに入り記憶もあやふやなジャン・ルイを彼の息子の依頼で訪れるアンヌ。

フランス人俳優の中では好きだったトランティニャンがこんな爺さんになっていたのかという驚きもあるが、わが母と同年代のアヌーク・エーメがまだまだ溌剌とした感じであるのにも驚く。逆に男の老残とは・・・と身につまされる部分はある。

「若いころの恋人に歳をとって再会したら老化に幻滅した」という身勝手な話を時々聞くが、そこもまた突破してしまえばこの映画のように、そこから先に涅槃のような人生最良の日々が待っているのかも・・・

・・・と書いて・・ふと気づく・・「何都合のいいこと言ってるの」と当然、妻には言われるでしょうね。はい、ただの夢想です。しかし、そういう夢想を想起させる映画ではありました。

最後のシーン、夕陽が沈むギリギリに緑色に輝くグリーン・フラッシュが美しい。