El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

BUTTER

世界中で読まれている! 読むべきは日本のオヤジかも

あの木嶋佳苗の人物像をテーマにしながらも、いくつもの人間関係を重奏的に重ね合わせ、そして破綻がなく、未来へとつながるかなり名作。世界中で読まれているのもよくわかる(というか、事件そのものを知らない外国で読まれているところがすごい)。

そして、料理というか食事というか調理、それを軸にかみ合わない男女、それもまた、木嶋(小説中では梶井真奈子)だけでない、何組もの男女。実際の事件のことをそこまで知らなかったのだが、この小説中にちりばめられた数々のエピソードはリアルで「きっと本当にあったんだな」・・・どこまでがノンフィクションでどこからが創作なのか、切れ目のなさも見事。

実際の事件の記録も読んでみたくなる。

それにしても、奮闘する女性たちにくらべてなんと印象の薄い男たちか・・・