「何のために生きるのか」を問い続けることが「生きること」
岡山県の津山という城下町を旅してきた。そこの書店が見かけたので買ってみた。90歳になって神戸市垂水区の老人ホームにご夫婦で入居した筒井氏がインタビューで自身の「最高傑作」と言っていたのがこの「モナドの領域」。
殺人事件(?)と多重世界などを組み合わせて、地上に現れた「GOD」の語りを通して世界の、宇宙のなりたちを語らせる。「文学部唯野教授」と同じように、登場人物が引用する数々の哲学者の理論を通して、気軽に読み始めた読者も哲学世界に連れていかれることになる。
最終章「神の数学」は感慨深い。単純すぎるかもしれないが自分なりにまとめると「何のために生きるのか」を問い続けることそのものが「生きること」という、トートロジーになってしまうが、意外に本質かも。
「どうせ死ぬのに、何のために生きるのか」という古典的な問いかけに対する答えとしては、67歳の今は、「この答えのない問いを、問い続け答えに近づこうとすること」そのものが「生きること」という理屈が腑に落ちる。
死という最終的に到達せざるを得ない状態に、日々刻々と無限に近づきながら、死を納得することなく、生きる意味を問い続けること。
「死を漸近線の向こう側においておくために生きる意味を問い続ける」・・・まあ、勉強だなどこまでも。確かに、90歳の筒井氏のインタビューは、そのような達観の末の雰囲気はあるな。