El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

自分で考える勇気 カント哲学入門

「開かれた社会とその敵」理解のために

岩波ジュニア新書なので中高生向けに書かれたカント哲学の入門書。しかし、これが中高生にわかるのかというと、なかなか難しいだろうなとは思う。

ポパーの「開かれた社会とその敵」の中にカントに関するポパーの講演録が収載されており、その30ページの講演録をよりよく理解するために本棚からこの本を引っ張り出してきて再読してみた。

カントにおける啓蒙とは何か

啓蒙とは、「未成年」の状態から抜け出ること。「未成年」とは、他の人の指導がなければ自分の知力を使用できない無能力のこと。未成年の状態の原因は知力の欠乏にあるのではなく、他の人の指導なしに知力を使用する決定と勇気の欠乏にある。

どんな人間でも自由であるのは、自由に生まれてくるからではなく、重荷ーみずから自由に決定することに対しては責任をもつという重荷ーを背負って生まれてくるからである(カント)。

こう書くと、単なる思い付きの精神論みたいに思えるかもしれないが、カントはそうした人間の自由をとことん理詰めで数学的・論理学的に分析している。その証明方法は一見難解ではある。

これが本書のタイトル「自分で考える勇気」のこと。逆に私自身は、この自分で考えて行動する勇気を重要視する余り、自己決定に重きをおきすぎて突飛な行動に出てしまうこともあるのではあるが・・・