El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

ひとり遊びぞ 我はまされる

川本三郎の日記風エッセー第4弾 つらい時期

川本三郎氏が月刊誌「東京人」に連載している「東京つれづれ日記」の2018年8月~2021年12月分。「すごいトシヨリ散歩」のレビューでも書いたように、この期間に盟友・池内紀(いけうち・おさむ)氏が死去(2019年8月)。そして、2020年・2021年は新型コロナというわけで、川本氏も連載のネタ作りに窮している様子がうかがえる。

それが本書のタイトルにも表れているー「世の中にまじらぬとにはあらねども ひとり遊びぞ我はまされる」(良寛)。コロナ禍で私がひたすら神戸東灘の住吉川の川べりを歩いていたように、川本氏は東京の善福寺川の川べりを歩いていたらしい。東京に住んでいたころに東京に住むならこのあたりがいい、と思っていたのが善福寺川の周辺だ(その後、水害には弱い地区であると知った)。

川本氏は今年79歳、旅・鉄道・映画・美術館・コンサート・舞台とを楽しむ人生も少しずつ、しずかなる老境になっていくのだろうか。その変化をも後進の私に日記を通じて教えてほしい。

「年ひとつ加ふることもたのしみとして しづかなる老いに入らまし」(吉井勇『残夢』)