El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

双調平家物語(13) 治承の巻2

官打ち! 清盛、出世と没落のメカニズム

鹿ケ谷の陰謀露見(治承元年 1177)から以仁王の令旨(治承4年 1180)まで。穏健派で都の法皇・貴族と福原の平清盛の調整役だった平重盛の病死につけこんで、平家の勢力を押さえにかかる後白河院。

後白河院と協調し、後白河院のために権力を得てきたという思いの清盛は院の仕打ちに次第に逆切れし都に兵をすすめ後白河院を幽閉、摂関家を含む朝廷人事を思いのままに。そしてつかの間、日本の最大権力者となるが、無理押しは反発を生むもの。以仁王・源頼政による源氏復権による平氏打倒の狼煙があがる・・・。

重盛が死んだあと、平氏の次世代は明らかに人材不足。その原因は「官打ち」・・・清盛の(おそらく後白河院に仕組まれた)あまりにも早い昇進~隠居のため、後継体制が準備できなかったことがある。

まあ、鎌倉幕府も後継体制は不十分で結局北条氏の政権になってしまうわけで、平氏政権→源氏政権→北条氏政権という流れの中で、天皇も上皇も摂関家も支配者としての地位を失っていくのだから、後白河の大天狗ぶりも策士策に溺れるということだったのか。

「官打ち」という言葉を初めて知りました。うーん、日本文化の奥は深い。