El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

物語 ウクライナの歴史

20年前の本書が予測できなかった未来を眼前にして・・

2002年発刊の「物語 ウクライナの歴史」、プーチンのウクライナ侵攻のせいでだろうか再版されて売れているらしい。しかしこの本に書かれているのは1991年のソ連の崩壊にともなうウクライナの独立まで。その後の20年間に、オレンジ革命だマイダン革命だとやっていて国家としてどこか固まり切れないところがあって、そこをプーチンに付け込まれた格好だ。

その「国家として固まり切れない」という点は、ウクライナの起源であるキエフ・ルーシあたりにまでさかのぼる。黒海の北岸の広大な黒土穀倉地帯で交通の要衝でもあり、ヨーロッパから、アジアから、ビザンチン世界から、トルコからさまざまな侵略があったということはわかる。ゆえに国家が築けなかったということだろうか。

逆説的に、ソ連時代が平和で工業化もすすんだ。そしてソ連から分離して国家となったら、また混乱に逆戻りとは・・・。極東の島国の住人にはそこが不思議ではある。アゾフ大隊のような民兵組織はコサックの伝統なのか。