El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

訣別 (上・下)

ハリー・ボッシュ シリーズ (19) 2016年、ボッシュ66歳の設定

LAPD(ロス市警)を組織の論理で追い出されたボッシュはLAPDに対して法廷闘争中。ゆえに昔の仲間も敬遠気味だ・・・どこかで聞いたような話ではある。

警察官としてのバッジの不在の不利を痛感した故か、私立探偵であると同時にサン・フェルナンド市(LAの周辺小都市)警察の無給の警察官として、いわばボランティア活動中。さすがに66歳だから、そんな感じにはなるよね。お色気シーンも今回は無し。

大富豪の後継者探しと連続強姦魔の二つの事件を織り交ぜながらの進行だが、やや雑な感じは否めず。過去の傑作にはあった哲学的とも言えるボッシュの姿ははっきりしない。

まあ、齢を重ねていく中ではそんな年もあるだろうね、と妙な方向に共感してしまう。自分自身が数年遅れで、コロナ禍の日々を漠然と過ごしているからだろうか・・・