El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか

落合中日の8年間のクロニクル

かなり売れている、野球本としては異例のことだ。落合博満が中日監督だった8年間。それぞれの年の出来事を、毎年いろいろな選手やスタッフの視点を加えたエピソードを描きながら進行する。

2004年(リーグ優勝・日本シリーズは西武に負け)では川崎憲次郎(シーズン後引退)。

2005年(リーグ2位)では森野将彦(立浪からレギュラー奪取)。

2006年(リーグ優勝・日本シリーズは日ハムに負け)では福留孝介。

2007年(リーグ2位 CS勝ち抜いて 日本ハム倒し日本1)では、宇野勝(コーチ)岡本真也。ただし主役はもちろん、最終戦の山井と岩瀬の完全試合リレー。

2008年(リーグ3位) 中田宗男(スカウト)

2009年(リーグ2位)吉見一起

2010年(リーグ優勝・日本シリーズはロッテの下克上に敗退)和田一浩。

2011年(リーグ優勝・日本シリーズはソフトバンクに敗退)小林正人、井出俊(編成担当)、トニ・ブランコ、荒木雅博 シーズン後、落合監督は契約更新せず退任。

この8年間に記者として落合に接し、彼自身も成長してきた著者・鈴木忠平。

選手・記者の鈴木それぞれが落合と接することで変化していく。構成が非常に巧みだ。「組織への献身よりも個の追及が優先された。そして、その代償として責任を負うのだ」そんな落合の生き様がかなり伝わってくる。こんな上司がいたことを思い出す。

エピソードとして面白いのは①2007年日本シリーズ最終戦完全試合直前での山井→岩瀬への継投。すべての関係者の話をもとに再構成され、あの出来事が納得できる。②2010年、西武からきた和田一浩の活躍の裏側にあったもの。③2011年 荒木ー井端の守備位置コンバートの本当の理由。

読み通すと、落合の人間性がぼんやりとではあるがわかったような気になる。当時の中日の選手たちの姿も。そしてこの記者自身の成長と成功。単純ではない野球本だ。読みごたえは充分。しかし、落合を追い出した中日のその後を見ると・・・立浪監督だいじょうぶか?

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