El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

優雅なeiπ=-1への旅

 オイラーの式が一番すっきりわかる

時々、数学本を読みたくなる。いわゆる受験数学を過ぎて、次に面白いのはオイラーの公式「eのiπ乗が-1」だろう。e(自然対数の底、ネイピア数)、i(虚数単位)、π(円周率)。なので「eのiπ乗が-1」と言われても数学好き以外には「意味わかんない」だと思う。その「意味わかんない」が「意味わかった」となるまでの道筋が高校数学(昔で言う数学III)程度の知識とこの本でたどれる。

意味の流通場の拡張。

自然数に負の数を拡張すると、整数

整数に分数を拡張すると、有理数

有理数に無理数を拡張すると、実数

実数に虚数を拡張すると、複素数

なんて話からはじまって、指数を拡張し、指数関数、三角関数、微分、積分、マクローリン展開で「eのiπ乗が-1」。まるで、自己認識の哲学世界を拡張していく作業を数学世界に投影したような感覚を味わえます。

この先には「フェルマーの最終定理」「ガロアの群論」「ゲーデルの不完全性定理」「ポアンカレ予想」などという世界があるのだが、それはもっと老後に「数学ガール」で愉しみたい。