El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

吉田初三郎鳥瞰図集

 さすが地図の昭文社、見やすい吉田初三郎!

日本や戦前の満州・台湾などをデフォルメした鳥瞰図で描き続けた吉田初三郎。多くは横長で新聞の新年号の付録だったり、各観光地が自己紹介のために制作を依頼したらしい。

この図集には収載されていないが「高千穂名所図絵」(宮内庁三の丸尚蔵館)のコピーを持っている。それには、わが父と母と私自身の生家の場所がなんとなく推定でき「ああ、このあたりだ!」という喜びがあった。それは偶然自分の故郷だったからだと思っていた。

ところがこの図集を見ると、どの鳥瞰図を見ても行ったことがある場合には「そうそうこんなところだったね」と思い出させるし、行ったことがない場合には「うわー、行ってみたい」と思わせる。これって、やはり吉田初三郎のパワーだよね。なんだか、どこも懐かしい感じが地図から立ち昇ってくるなんて。

そんな吉田初三郎集を地図の昭文社が地図製本のノウハウを生かしたのか、折り込みを広げればオリジナルの吉田初三郎の地図が鮮やかによみがえる。あるいはやや大きいくらい。また時には超拡大図もあり。楽しい。

同じ鳥瞰図である「全国鉄道絶景パノラマ地図帳」(集英社)と見比べながら楽しむとリアルとデフォルメを行ったり来たりでさらに楽しい。