El librero la Fontana

El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚「人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ 」(アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

潮風のむこうには―平生釟三郎と住吉村の人々

 旧住吉村住人の必読書

「住吉村の人々」ってだれ?と思うかもしれないが、現在の地名では兵庫県神戸市東灘区住吉本町住吉東町住吉宮町あたり。合併して神戸市東灘区の一部となるまでは住吉村でした。住吉村は大阪と神戸(三宮)の中間ということで関西財界の重鎮が続々と宅地開発して居を構えた時代があり「日本一の富豪村」と呼ばれたことも。

住吉といえば、「コープこうべ」(いわゆるコープ発祥の地)、「住吉学園」(実体がわかりにくいが、この本を読めばわかる)、「灘中・灘高」「甲南学園」などなど、富豪や起業家が多く住んでいたことや、江戸以来の酒造りや菜種油(住吉川の水車で絞る)での利潤が豊富だったことから、ユニークな組織や学校がある。そして私のような、他所から転入してきたものもそれらの恩恵を受けている。引っ越してきて初めてわかる住吉の良さ。

その「住吉のユニークさ」が実現するまでには多くの先人が関わっているのだが、本書はその一人、創成期の東京海上の重鎮でもあり、甲南学園をはじめ住吉の多くのことの発端を作った人、平生釟三郎(ひらおはちさぶろう)をメインに据えた物語。

平生釟三郎の事績を調査する地元の学生や歴史好きのディスカッションのパートと平生釟三郎の評伝が交互に並べられて読みやすい。なにより、住吉のことがよくわかる。住吉の住民必携でしょう。

Amazonでは品切れとなっているが、住吉駅の書店にはありますよ。