El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

ヘンな日本美術史

 やがてかなしき明治画壇

鳥獣戯画から雪舟、洛中洛外図、そして明治画壇まで、さすがに画家目線の分析・解説は面白いし目からうろこが満載。それでもすずしろ日記ほどには楽しく読めないのは、文章のせいかな・・・。選んだ言葉が皮肉っぽかったり、複文が多いことなど、読んでいてサラサラとは流れない何か小骨っぽいものがある。山口さんの絵の印象と文章の印象に意外なギャップを感じました。

個人的には最終章「やがてかなしき明治画壇」が、自身の芸大時代の記載もありおもしろい。明治期、新しい西洋画を学んで日本にもたらそうとしても、西洋の絵画そのものも大変革期(印象派セザンヌなど)だったので、せっかくの留学もすぐに陳腐化したというあたりの不幸な巡りあわせは興味深い。