El librero la Fontana / ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

LGBTとハラスメント

性的マイノリティの理解には LGBTよりもSOGI

LGBTとハラスメント (集英社新書)
 

ここ10年くらいの間にLGBTというワードが急にポピュラーになり、差別をなくそうという運動が活発になり、一方で差別的発言もあり、さらには差別的発言へのバッシング騒ぎもありました。そのせいで、医師としてはなんとなくあまり関りたくないワードになってしまったのではないでしょうか。そもそもLGBTというワード、レズビアンとゲイとバイセクシュアルとトランスジェンダーの頭文字を連ねて性的マイノリティ全体を象徴しているということなのですが、それ自体がわかりにくいです。

一方で、社会的認知がすすんだことで医療者も患者さんとしてだけでなく同僚としてそうした性的マイノリティの人たちと接する機会も増えてきています。今回は性的マイノリティに関する用語がわかる本を選んでみました。

この本「LGBTとハラスメント」は性的マイノリティとは何なのかをきわめてわかりやすく解説してくれます。ポイントは「性」について4つの軸で考えるということです。その4つとは

  • 法律上(出生届上)の性
  • 性自認(Gender Identity)自分の性をどう認識しているか
  • 性表現 社会的にどうふるまうか(服装・言葉など)
  • 性的指向 (Sexual Orientation)自分の性愛・恋愛感情がどの性に向かうか

このうち最も重要なのが②の性自認(GI=Gender Identity)と④性的指向(SO=Sexual Orientation)です。性自認が法律上の性と同じであればシスジェンダー、逆であればトランスジェンダーとなります。一方、性的指向が法律上の性と同じであればホモセクシュアルで、逆であればヘテロセクシュアルとなります。GIとSOはまったく別の概念なのだという理解が大切です。

 性的マジョリティとはシスジェンダーヘテロセクシュアルということになります。性的マイノリティの人々もそれぞれ、例えばレズビアンとゲイはシスジェンダーホモセクシュアルということになります。レズビアンとゲイはGIについてはシスなので性自認で悩むということはありません。一方、トランスジェンダーは法律上の性と性自認が一致しないのですからその違和感・悩みが深く、性別適合手術を必要とすることもあります。つまり性別適合手術受けるのはほぼトランスジェンダーの人たちなのだということが理解できます。

このようにGIとSO(二つ合わせてSOGIソジという)にわけて考えるとすっきり理解できますよね。すでにパワハラ防止指針において明確に「相手の性的指向性自認に関する侮辱的な言動」や「労働者の性的指向性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に曝露すること(アウティング)」はパワハラに該当することが明示されています。SOGIについてのパワハラということでSOGIハラとよぶらしいです。

 LGBTについての社会的認知がすすんできて、とくにトランスジェンダーの人が性別変更手術を受け性別を変更することが増えています。それは、急に増えたというのではなく、社会の中で認知されずにいたものが認知されてきた結果と考えられます。そして社会に一定の割合で性的マイノリティが存在することを普通のことだと考えるべき時代になっているのです。SOGIを理解して、SOGIハラをしない・させないということですね。本書後半はたくさんの事例集になっていますので一通り読むと理解がさらに深まります。