El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

国宝 下 花道篇

たしかにAudibleで聴いた方がずっと楽しめる

国宝 下 花道篇

国宝 下 花道篇

  • 作者:吉田 修一
  • 発売日: 2019/12/13
  • メディア: Audible版
 

長崎のヤクザの息子が歌舞伎の女形として人間国宝(と同時に・・・)になる約50年のストーリーなので長い。Audibleでも上下で20時間近くなのでコロナ禍の日々、一日一時間のウォーキングで聴いても一カ月以上楽しむことができる。プロットがそこまで複雑ではないので聞き流すだけでも十分に楽しめる。さらに、語りが尾上菊之助ということで、途中の歌舞伎のセリフはもちろん歌舞伎のごとく、普通の会話もなかなか臨場感がある(長崎弁はちょっと違うが)。また、多くの歌舞伎の演目の解説も、これはもちろん作者の吉田修一が書いているのだろうが、読み上げもスムーズで耳に心地よい。

と、いうわけでAudibleで何を聴こうか迷ったら「国宝」をお薦めしたい。聴くのは読むよりは記憶に残りにくい気がしているので、あちこち思い出さないといけない本には適さない気がする。こういう一代記みたいなものが適しているのだろう。聴いている間は歌舞伎通になった気分だ。