El librero la Fontana

El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚「人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ 」(アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

ブックガイド(91)――Z世代≒コロナ世代――

 ――Z世代≒コロナ世代――

 気楽に読める一般向けの本で、アンダーライティングに役立つ最新知識をゲットしよう。そんなコンセプトでブックガイドしています、コロナ禍の中、新年度になり査定歴24年に入りました、査定職人ドクター・ホンタナ(ペンネーム)です。4月、新入社員の季節ですね。つい最近までは「ゆとり世代」が新入社員でしたが、最近の新入社員は、今回のテーマ「Z世代」なんです。「Z(ゼット)世代」とはゆとり世代(1987~1995生まれ)の後の世代のことで1996年以後に生まれた世代です。最近、耳にすることが増えてきました。

そこでZ世代理解のための1冊、「若者たちのニューノーマル 世代、コロナ禍を生きる」を紹介します。「Z世代」という世代論を超えてアフター・コロナの時代に向けた希望も感じさせてくれる不思議な魅力を持った本です。

前半が小説風フィクションで49歳の父親と21歳の息子が肉体だけ入れ替わる(「転校生」や「君の名は。」でおなじみ手法)という設定です。父親がZ世代になりすましてZ世代の日々を体験します。Z世代はスマホ・ネイティブ、SNSネイティブという、いわばデジタル革命の申し子世代であり、それ以前の世代の延長線上ではうまく捉えきれないところがあるのです。ところがこのフィクションを読むことで私もZ世代の感覚を疑似体験できました。そこでわかるのは、まさにコロナ禍の中での若者インタビューを通して著者が感じた最大のポイントは「いま社会で求められていることはZ世代が、コロナ前から求めてきたことだ!」ということです。


印象的な部分を引用します―――(309-310ページから引用)

富よりも「人間らしい生き方」を追い求め、自分や家族、周りの友人・知人の健康と幸せを願う。あるいは、経過より結果を意識しながら生き、働く。業務や健康管理を数値で「見える化」し、中長期的なコスパを実現しようとする。動画やSNS、オンラインを効率的に使いこなし、いつでもどこでも誰とでも、既存の枠を超えてグローバルにつながれる環境を創りあげる・・・・・。(中略)コロナ禍ですっかり一般化した、テレワークや副業解禁、人材シェアリング、ジョブ型雇用なども、以前から「本腰を入れて、取り組まないと」と、繰り返し求められてきたことでした。(中略)にもかかわらず、私も含め大人たちは「まだもう少し、先のこと」だと思っていました。

Z世代が、これほど身近で「もう時代は変わったんです」「僕たちが人間らしい生き方を標榜するのは、決して『小さくまとまっているから』でも、『欲がなさすぎるから』でもないんですよ」と、ニューノーマルな価値観を発信し続けていたにもかかわらず、です。―――――(引用終わり)。


コロナ危機、早く収束して以前の社会に戻りたい・・・と思っている人も多いと思いますが、コロナ直前の日本って少子高齢化や巨額の財政赤字で煮詰まっていたじゃないですか。そんな社会の閉塞感を一番感じていたのがそこにこれから放り出されるZ世代だったのです。ところが、コロナ対策ということで、テレワークやオンライン授業、企業や人の地方移転といった多くの変化がコロナ以前では考えられないスピードで進行しています。そして社会はもうもとには戻らずこの変化の行きつく先が新しい社会の標準(ニューノーマル)になっていく、そんなZ世代的未来図が現実的になってきました。

さらに巨視的に見れば、Z世代に限らず日本社会にとってもコロナ禍を克服することが煮詰まった日本社会を打開し次の時代を迎えるためのきっかけになるかもしれない―そう考えるとコロナ禍でもいくらか明るい希望が持てます。

中世のペスト大流行ではヨーロッパで2000万人から3000万人が、全世界でおよそ1億人が死亡したと推定されています。しかし、この破壊が人口の構成と分布を変え、教会のような権威を失墜させ、古い仕組みが機能しないことをさらけ出し、ルネサンスにつながりました。コロナ禍も次の世界への地ならしになるのではないでしょうか。そしてアフター・コロナの時代になったとき、そこに現れるニューノーマルはZ世代的であり、彼らこそが変革の中心にいるのでしょう。(査定職人 ホンタナ Dr. Fontana 2021年4月)。