El librero la Fontana

El librero la Fontana・ホンタナ(いずみ)氏の本棚「人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ 」(アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

ドクター・ホンタナの薬剤師の本棚(9)

アフター・コロナとZ世代

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薬剤師の職場にZ世代が登場

薬剤師のみなさん、こんにちは! ドクター・ホンタナの続・薬剤師の本棚、今回のテーマは「Z世代」。「Z世代って何?」「薬剤師とどんな関係が?」と思うかもしれませんね。「Z世代」とはゆとり世代(1987~1995生まれ)の次の世代、つまり1996年以後に生まれた世代です。最近、よく耳にするようになってきました。

Z世代は2021年現在、25歳くらいから下の世代です。ということはコロナ禍の中で薬学部を卒業して薬剤師になるのがZ世代の先頭集団なのです。あなたの職場の新卒の新人、それがZ世代です。

Z世代の基礎知識

Z世代の語源は、アメリカで「冷戦期のX世代」「冷戦崩壊~ネット時代のY世代」に続く世代ということからZ世代と呼ぶらしいです。Z世代のことを書いた本はまだ少ないのですがその中から今回2冊をとりあげてみました。まずZ世代について網羅的に教えくれるのが1冊目、原田曜平さんの本でタイトルもズバリ「Z世代 」です。データ量やグラフが豊富でZ世代の基礎知識を得るのにはうってつけです。

スマホ・ネイティブ、SNSネイティブ・・・Z世代は生まれた時からスマホSNSが身近だった世代です。SNSがあるために一度つながりができるとなかなかそれを断ち切れないことや、「いいね」的な肯定欲求が強いことなど一通りのことはわかります。Z世代はテレビ離れ世代で、YouTubeTikTokの世代です。そもそも少子化で人数が少なく企業が消費者としてのマーケッティングを怠ってきた世代なのですね。

この本はそんなZ世代にモノを売るにはどうすればよいかというマーケティング目線で書かれています。一方でこの本は、そのマーケティング志向ゆえに、何かと上から目線が感じられ昔ながらの世代論感覚でZ世代を解説しているように思えます。おそらくZ世代自身にはオヤジ臭くてこの本は受け入れられにくいかな。

Z世代を疑似体験

そこで、お薦めなのが今日の2冊目、「若者たちのニューノーマル Z世代、コロナ禍を生きる 」です。著者の牛窪恵さんはNHKのテレビ番組「所さん! 大変ですよ」などでお見かけするマーケティング・ライター。表紙に「物語とキーワードで読み解く withコロナの消費潮流」とあるのですが、読んでみると消費潮流分析という枠を越えてZ世代とアフター・コロナの時代に向けた希望を感じさせてくれる不思議な魅力を持った本なのです。

本の構成は、前半が小説風フィクションで49歳の父親と21歳の息子が肉体だけ入れ替わる(「転校生」や「君の名は。」でおなじみ手法)という設定です。49歳の父親が心はそのまま49歳でZ世代の息子になってしまい、Z世代のコロナ禍の中での日常を体験するのです。父親世代とZ世代の両方の目線で世の中を見るという疑似体験ができるしかけになっており、これがなかなかわかりやすい。Z世代はスマホ・ネイティブ、SNSネイティブという、いわばデジタル革命の申し子世代であり、それ以前の世代の延長線上ではうまく捉えきれないところがあるのが、このフィクション部分を読むことで私もZ世代の感覚を疑似体験できました。私の次男がZ世代なのですが「なるほど、あの時彼が言っていたのはそういうことだったのか」と気づかされることがたくさんありました。

ニューノーマルとZ世代

取材時期が2020年3月頃だったらしく、この本はまさにコロナ禍の中でのZ世代へのインタビューがベースになっているのでコロナ禍に対する若者たちの本音も知ることができます。目から鱗だったのは、インタビューを通して著者が感じた最大のポイント「いま社会で求められていることは、まさにZ世代が、コロナ前から求めてきたことだ!」ということです。

そのことがわかる印象的な部分を引用します。

―――(309-310ページから引用)
サステナブルな視点で地元や自然、地球環境に配慮する。富よりも「人間らしい生き方」を追い求め、自分や家族、周りの友人・知人の健康と幸せを願う。あるいは、経過より結果を意識しながら生き、働く。業務や健康管理を数値で「見える化」し、中長期的なコスパを実現しようとする。動画やSNS、オンラインを効率的に使いこなし、いつでもどこでも誰とでも、既存の枠を超えてグローバルにつながれる環境を創りあげる・・・・・。

私たち上の世代も含めて、おそらくほとんどの人が「いつか、そうした社会を実現すべきだ」と、頭のどこかで感じていたはずです。また、コロナ禍ですっかり一般化した、テレワークや副業解禁、人材シェアリング、ジョブ型雇用なども、以前から「本腰を入れて、取り組まないと」と、繰り返し求められてきたことでした。(中略)にもかかわらず、私も含め大人たちは「まだもう少し、先のこと」だと思っていました。

Z世代が、これほど身近で「もう時代は変わったんです」「僕たちが人間らしい生き方を標榜するのは、決して『小さくまとまっているから』でも、『欲がなさすぎるから』でもないんですよ」と、ニューノーマルな価値観を発信し続けていたにもかかわらず、です。

(引用終わり)―――

 

まとめ:大災厄の後に大発展あり

感染爆発に医療崩壊・・早くコロナ以前の社会に戻りたいと思っている人も多いと思います。しかしコロナ直前の日本って少子高齢化や巨額の財政赤字で煮詰まっていたことを思い出してください。そんな社会の閉塞感を一番感じていたのはそんな社会にこれから放り出されるZ世代だったのではないでしょうか。

コロナ対策ということで、テレワークやオンライン授業、企業や人の地方移転といった多くの変化がコロナ以前では考えられないスピードで進行しています。そして社会はもうもとには戻らずこの変化の行きつく先が新しい社会の標準(ニューノーマル)になっていく、そんな未来図が現実的になってきました。そしてZ世代のライフスタイルや考え方はもともとそのニューノーマルに近いものなのです。

さらに巨視的に見れば、Z世代に限らず日本社会にとってもコロナ禍を克服するために起きている社会の変化そのものが、煮詰まった日本社会を打開し次の時代を迎えるためのきっかけになる――そう考えてみれば、いくらか明るい希望が持てるのではないでしょうか。

中世ヨーロッパのペスト大流行ではヨーロッパで2000万人から3000万人が、全世界でおよそ8000万人から1億人が死亡しました。全人口の半分以上が死亡したことになるわけで大災厄以外のなにものでもありません。しかし、この破壊こそが次の新しい時代の地ならしとして必要だったと考える歴史家は多いのです。人口の構成と分布を変え、教会のような権威や既得権益を失墜させ、古い仕組みが機能しないことをさらけ出しました。

コロナ禍は現代のペストなのかもしれません。コロナ禍が終わって、アフター・コロナの時代になったとき、そこに現れるニューノーマルの担い手はZ世代なのかもしれません。Z世代薬剤師にも大いに期待しましょう。

それでは、また次回。