古山高麗雄氏の絶筆
「断作戦」「龍陵会戦」「フーコン戦記」、古山高麗雄の戦記三部作に共通するのは、それを書いている「現在」と戦われている「過去」の戦争が交錯して描かれること。生きた者、死んだ者がいて、過去を振り返るものがいる。そうしたすべてが「しょせん運・不運」であるといいながら、運・不運をわけた分岐点のことをくどくどと思い出してみたりする。
思い出す当人にとってみれば、いくつもの分岐点で今に続く道を選んだ、選ばざるをえなかった結果として今の自分があるので、結局選んだことを否定するのは難しい。あのとき違う方を選んでいたら、と言ってみたってしかたない。しかし、そんな想像をしてみたりする。
そんな具合に自分の来歴を振り返る文章が、平成14年(2002年)に81歳でなくなった古山高麗雄氏の絶筆となった本書。最後の章で「玉の井の勝子」の思い出を語りつつ筆を絶った・・その瞬間のリアルさ。
「悪い仲間」で微妙な関係になった安岡章太郎は古山よりさらに10年長命だった・・まさに、しょせん運不運。
文庫本になったのをきっかけに、図書館で元本を借りて読んでみた。