「はじめに」「プロローグ」で思い切りLiving for Today・・・今を生きるというやや哲学的な切り口の話になり、それに魅かれて読み始めると、メインは「タンザニアを舞台としたタンザニア人と中国人のインフォーマル経済」の話がレポート調で続くことになる。今を生きることから遠く離れてしまった日本人や欧米人のライフスタイルから「今この瞬間を生きる」みたいな禅的なライフスタイルへの転換・・・とかそういう話ではない。
この本は「その日暮らし」しかできない社会の社会構造を分析しているので、われわれがLiving for Todayをどうやったら取り戻せるのかと思って読んでもそれは解決しない。
日本の読者は文明化した我々にとってのミニマリストブーム的な「その日暮らし」を求めて読み始めるのではないだろうか。そういう意味では肩透かし。
「その日暮らし」しかできない社会もやがて安定した将来不安の少ない社会になるのだろうが、そうなると今後は目の前の生活の意義が不明瞭になって「今を生きる」に憧れる。しょせんは無いものねだりなのかも。