エイズの拡大は歴史的必然・・・だったのか
中央アフリカの地方病的な類人猿由来のウイルス感染症がいかにして世界中に拡大し2500万人の命を奪うまで流行したのか。そのプロセスがくっきりとわかる名著です。
アフリカが近代化し都市化が始まると労働者男性の都市集中がおこり、それが売春の隆盛を引き起こし辺境の感染症が一気に拡大します。時期を同じくして、アフリカ諸国の独立をめぐる政治的混乱のなかでハイチやアンゴラからの人材支援の人々が中央アフリカと母国を往復したことが、地域から世界への拡散につながりました。さらにハイチがアメリカの性的リゾートであったこと、中米の血液製剤産業が増幅装置となったこと、などなど。
医療用血液製剤がからんだところはC型肝炎の拡大とも似た構図です。中国などに比べて、日本でエイズ感染が小規模にとどまったのは肝炎問題が先行したことで売血が禁止されていたからだとも言えるでしょう。