El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

大災厄の後に大発展あり(引用)

(ちょっといい話なので、そのまま引用)

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/71191?page=5

新型コロナ感染症も、亡くなられた方々や大きな影響を受けている方々にはお悔やみとお見舞いを申し上げるほかないが、より巨視的に見れば、この感染騒ぎを乗り越えて、世の中が少しだけでも便利で過ごしやすい方向に変っていくきっかけになるかもしれない。

日本社会は確実に、遠隔での働き方が促進するだろうし、ひいては職場環境全般のゆとりにもつながるのではないか。大学などでの授業のあり方も変わるかもしれない。

中世ヨーロッパのペスト大流行は何回があるが、14世紀の世界的大流行はとくに黒死病と呼ばれて怖れられた。ヨーロッパで2000万人から3000万人が、全世界でおよそ8000万人から1億人が死亡したと推定されている。ヨーロッパでも中国でも、全人口の半分以上が死亡したことになる。

大災厄以外のなにものでもないが、この破壊が次の新しい時代の地ならしとなった、と解釈する向きは少なくない。人口の構成と分布を変え、既存の教会の権威を失墜させ、社会の古い仕組みが機能しないことを白日のもとにさらけ出した。

さらに「汚水と汚物処理を合理化するための都市化を促した。都市間の情報ネットワークを強化し、検疫と隔離システム、さらに公衆衛生とからなる近代の予防医学をも生み出した」(蔵持不三也『ペストの文化誌』朝日新聞社、p. 366)。

「たえまない死の恐怖が一世紀も続いたあと、ペストと疫病の死者を収めた死体安置所のなかから、ヨーロッパはすっきりと洗われ、新しくなって蘇った──雨のあとの太陽のように」(ジョン・ケリー黒死病中央公論新社、p. 384)

コロナ後の世界もこうなることを祈ろう。