El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

千葉西総合病院 トップ病院への軌跡

単なる自慢本にあらず。自分の冠動脈疾患予防・治療のためにも一読の価値あり

  千葉西総合病院。松戸にあるこの病院、心カテーテルによる治療数がここ数年ずっと日本一らしいです。著者の三角先生は心カテーテル領域のいわゆるスーパードクター。大阪生まれで東京医科歯科大からアメリカで心カテーテル修行に邁進し一時期ハワイで開業したりもしていたようですが50歳になって請われて現在の病院へ。どよんとした病院体制を持ち前のパワーで大改革し10年で心カテーテル治療数日本一の病院を作り上げました。特に冠動脈の内側にこびりついて石のように固くなったコレステロールの結晶をロータブレーターという道具でトンネルを掘るように削りそこにステント(支えとなるチューブ)を入れるという手技では右に出るものなしということです。

本書はまず三角先生が千葉西総合病院に来てからの改革の過程が語られます。けっこうアクの強い、若くなければついていけない、かなりハードな感じですね。早朝から夜中まで心カテーテルをやりながら、週末には講演会か患者教育など集客(集患者)努力にも熱心です。講演会では自分の携帯番号が書かれたグッズを配って「胸痛発作があったらいつでも連絡可」というのもすごい。

続いて、症例を紹介しながら検査法や手技の説明です。平気だった運動でいつの間にか胸苦しいようになったら心臓CTを受けるべきだということ、悪玉(LDL)コレステロールは薬のんで正常範囲にしておくべき・・などプロの話だけに説得力あります。一般的な冠動脈疾患予防と考えても十分に役立つ本です。後半は医師や看護師、コーディネーターなどのスタッフのインタビュー。多くの人が三角先生のバイタリティを賞賛していますが、同時に「大きなこども」(もちろん親しみをこめて)と言っているのが印象的でした。最後に、子供時代からの回想記。

年間3000例という治療数について「質の低下は?」という問いかけに「医療では量が質を作る」という言葉に感心しました。アンダーライティングも量をこなしてみて初めて質が作り上げられます。量の中に、質を高める要素が入っているのは同じだなと感じ入りました。

スーパードクターの「自慢本」?と思って読み始めましたが、すっかり感服してしまいました。関東に住んでいたら「胸が痛くなったら松戸の千葉西総合病院へ!」でしょうか。人気のためかなり混んでいるようではありますが。