こうして幕末が準備された
岩波新書の日本史シリーズでは近代史全10巻のうち最初の巻が「幕末・維新」なので本書とかぶっている。本書はどちらかというと江戸後期(18世紀後半から19世紀前半)がメイン。
徳川家斉(いえなり)の50年という長い長い将軍在位。一方朝廷でも光格天皇・仁孝天皇がほぼ同時期。長期政権による政治停滞の中で「日本は天皇の国」という皇国観念がじわりじわりと醸成されていく様は興味深い。
それにシンクロするようにロシア・イギリス・アメリカの船が日本にアプローチしてきたことで一気に幕末へ。これらの国々の動きの原因のひとつがナポレオン戦争の結果だったということもおもしろい。日本は、開国後の生糸や綿や銀の輸出入であっという間に国際経済に組み込まれる。まさに人間の欲が歴史を転回させるエネルギーになるということか。