El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

ヨーロッパ 繁栄の19世紀史

「蒸気船」と「電信」がそんなに優先順位が上?!

ヨーロッパ 繁栄の19世紀史 (ちくま新書)

ヨーロッパ 繁栄の19世紀史 (ちくま新書)

 

 19世紀のヨーロッパ繁栄の原因分析を目指しているのだと思う。しかし、ページ数が少ない割に扱う対象が広くてあっさりしてしまった感じ。また通史の中に著者の主張が唐突に織り込まれるが、それを裏付ける基礎的事実の叙述が十分でないため、その根拠は?と感じることが多い。例えば何度も、ヨーロッパの拡大は「蒸気船」と「電信」のおかげと主張し、その説を強化するようなデータが書かれている。一読、「なるほど!」と思うのだが・・本当に筆頭にあげるほどのことなのか、冷静に考えるとよくわからない。紋切り型のレトリックが多いのは疲れる。