El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

哲学入門

前向きに生きていこう、とそんな気になれる

哲学入門 (ちくま新書)

哲学入門 (ちくま新書)

 

 科学の発達、DNAやら量子力学やら、ですべてが科学で乗り切れる、そんな時代の気分が一方にある。そして、いやいや、生きる意味・・とか、意識は科学では解明できないとか、そんな気分の人々もいる。そんな二つの流れをぐっとまとめてひとつに(止揚)しようという・・・本来ならすごく面倒くさい話を独特の語り口で納得させてくれました。

AIについての議論からドイツ観念論を推す論調もある(「AI原論」)このごろですが、やっぱり科学の時代を生きたわたしには、唯物論の枠の中でも生きる指針が見いだせる戸田山先生の話は腑に落ちる。

哲学とは、個々の人生の超越的な無意味さ(たとえば、どうせ死ぬのになぜ生きるとか、人類史の中でのちっぽけな自分なんて無意味とか)にどんな形で納得できる解釈を与えるのかということだと思う。観念論もひとつの答えだし、戸田山先生が紹介する唯物論で押し切るのもひとつの答えかと思う。

最終的にはそれぞれ個人がよりよき生き方ができるか、ということだが、考え方の幅を広げるには学びは必要。唯物論側からの考え方を学ぶにはベスト。