——藁をもすがる・・がん民間療法体験記——
気楽に読める一般向けの本で、アンダーライティングに役立つ最新の知識をゲットしよう。そんなコンセプトでブックガイドしています。査定歴21年の自称査定職人ドクター・ホンタナ(ペンネーム)です。今回のテーマは「がん民間療法」。
日本の民間保険会社の医療保険は、実際のところ日本の医療がほぼ100%公的医療保険による保険診療であることを前提に商品開発されています。皆さんも、医師や医療機関がやっていることには、「医学」の科学的裏付けや「医師」の良心という漠然とした根拠だけではなく、厚労省などの公的な権威による裏付けがあると思っているのではないでしょうか。
ところが日本には「自由診療」というゾーンの医療があってそのゾーンが急拡大しています。そこで行われる医療は医療者と患者の間の契約関係だけで行われています。不妊治療や美容整形、レーシックなどなど。そして、最近世間を騒がすことが多いのが「がん民間療法」という自由診療です。川島なお美さんや、小林麻央さん、で話題になりました・・・。試みに「樹状細胞」や「リンパ球療法」や「免疫療法」で検索すると、いやいやただ単に「乳がん」と検索するだけでも、ずらずらと自由診療の医療機関が出てきます。ネット広告が「がん民間療法」の隆盛を招いているのかもしれませんね。
ところが、その後当事者がお亡くなりになるからでしょうか、それら民間療法の実態はなかなかわかりません。しかし、さすが作家、高橋三千綱氏がリアルな闘病記を書いてくれました。さっそく読んでみました。
40年前に「九月の空」で芥川賞を受賞した高橋三千綱さんの闘病(?)記は「作家がガンになって試みたこと」。高橋氏はアルコール中毒で肝硬変、食道静脈瘤があるところに食道がん、胃がんと診断され・・・。まずは奥様が調べてきた「幹細胞療法」で450万円、次に、娘さんが調べてきた「樹状細胞ワクチン療法」に・・・とすすんだところでストップ。どちらもネット情報に誘われています。
高橋氏の結論はきっぱり、「もし、希望を抱いたまま痛みも苦しみもなく最後を迎えられるなら、民間療法も意味あるだろう。お金をむしり取られるのもまた患者の喜びであったかもしれない。しかし、民間療法はあまたあるが、私から見ればそこで救われる命はないのである。」・・・・ここに至るまでの道もながかった・・。
高橋氏が具体的に関わったのは「幹細胞療法」の◯◯フィールドクリニックと「樹状細胞ワクチン療法」のセ◯ンクリニック。「幹細胞療法」には500万円近く払っている。日本では、「ガイドラインの標準治療」以外の独自な治療を、医師が独自の見解で自由診療としておこなうことに対してほとんど制約がない、ということを、この本を読んで理解してほしいです。(本の中ではクリニックは実名です)
もしあなたが、がんと診断されて、自由診療のがん治療をすすめられるようなことがあったら、必ず、この高橋氏の体験記を読んで、よく考えて行動しましょう。これらのクリニック(検索すればすぐに出てきます)のHPを読み、そしてこの高橋氏の体験記を読めば、がん民間医療の真実が見えてくるはずです。そういう意味では、クリニックの実名を挙げて糾弾しているとも言えますね。(査定職人 ホンタナ Dr. Fontana 2018年10月)
関連本・サイトなど
ちょっと古い本ですがこちらは米原万里さんの書評集。ところが書評を読んでいくと次第に才媛米原万里のがん闘病記となり、ついには死に至る・・・。そして死を前にして、さまざまな怪しいがん治療本を読み、その書評も書き、実際にその治療法を受け続けた記録にもなっています。誰も「死」を直視できない・・です。
<追記>このブックガイドを仕上げたところで、『オプジーボの本庶先生がノーベル賞受賞』というニュースが!おめでとうございます!
ところがそれをきっかけに「あやしい免疫療法」もなんだか蠢(うごめ)いているようです。ブックガイドのテーマとリンクしてもいますので、そんな記事も紹介しておきます。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181003-00010000-bfj-soci