El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

猿の見る夢

昭和な男と昭和な女のファンタジー

猿の見る夢

猿の見る夢

  • 作者:桐野 夏生
  • 発売日: 2016/08/09
  • メディア: 単行本
 

桐野さんも65歳くらいですか。団塊世代だったんですねぇ。そう考えるとこれまでの著作もそして今回も団塊世代を代表する女流大衆作家だったんだなぁと感じます。「終わった人」の内館さんも69歳の団塊世代。お二人が描く、昭和なサラリーマンがこうも似ているのは、やっぱりそういう時代だったんでしょう。

今となっては、この主人公のような人って「そういえば居たな・・」くらいの遠いものになってきました。今の50歳くらいは均等法世代で、男の自立についても厳しいです(うちだけ?)。時代は変わっていくと・・・痛感しながら、平成の終わりに一昔前、昭和な男と女のファンタジーを読みました。

四猿「見ざる・言わざる・聞かざる・せざる」はネタとしておもしろいし、正鵠を射ていると思います。特に大事なのは、やはり「言わざる」と「せざる」でしょうか。

カバー絵は鴨井玲だが文庫ではラ・トゥールの「女占い師」に。