El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

日本の近代とは何であったか

 連環する日本近代史・・名作

天皇専制のためにこそ、権力の分散」
藩閥もまた政党に姿を変えていく」
世界恐慌に呑み込まれる、井上準之助高橋是清・・そして暗殺」
「精算されず冷戦にもちこまれた日本の植民地帝国」
キリスト教権力と世俗の王権を重ね合わせた天皇
教育勅語>>明治憲法
「ワシントン体制≒冷戦後の世界」

こうやって、キーワードを並べるだけで、日本の近代の年表からだけでは知ることができない歴史の真実が次から次へとわかってきて知的興奮。そして終章で第一次世界大戦後と冷戦崩壊後を重ね合わせての現代への洞察。すばらしい構成力。

さらにあとがきで著者の研究歴や学問への態度を披瀝しながら、鴎外や漱石に思いをはせバジョットの著作につなげることで、序章へと還流する。気づいたらまた最初から読んでいる・・・という岩波新書の名作。