El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

ブックガイド(27)その検索、大丈夫??

——その検索、大丈夫??——

気楽に読める一般向けの本で、アンダーライティングに役立つ最新の医学知識をゲットしよう。そんなコンセプトでブックガイドしています。査定歴21年の自称査定職人ドクター・ホンタナ(ペンネーム)です。今回取り上げるのは、みなさんもよく使っていますよね!「ネット検索」。

芸能人が「がん」になり怪しい民間療法を受けて亡くなったという話がときどきあります。週刊誌で読むと、その怪しい治療にはまってしまうきっかけがネット検索だったというのはいかにも現代的な話です。ニュースになるのは氷山の一角でしょうから、一般人でもそうした患者さんはかなりいそうです。医師であれば自由診療のがん治療は怪しい治療なのではないかとすぐに感じますが、その怪しい治療をやっているのもまた医師であるわけで・・・おそらく、一般の人にはその怪しさがわからないのでしょうね。怪しい自由診療で荒稼ぎ・・・の話、はまた別の機会にゆずるとして、今回はこのネット検索と医療情報の話にしぼってブックガイドをしてみます。

この本でまず認識できたのは、まとめサイトとネット広告のしくみ。そこではPV=ページ・ヴューの数でお金が発生しているということです。つまり何回そのページが開かれたかでそのページに広告を出している企業からの広告料が決まるということです。つまり、そういうサイトを作った人は、とにかくリンクをクリックさせて広告が載っている(広告だとはわかりにくい場合も多い!)ページを開かせようとします。

Naverなどの一見便利なまとめサイトもすべて原理は同じです。わたしもこの本読むまでは「どこのヒマ人がこんなおまとめ作るんだろう」と思っていましたが、すべて広告料に連動しているんです。ですからそのページへのリンクにはいかにも興味をひきそうな言葉がならんでいます。

そんな「おまとめ」を誰が書いているのでしょうか?よく「自宅にいながらネットで記事を書くバイトしています・・」という主婦をテレビで見ますが、実はそんな人たちが書いているんです。書くときにも本を読むわけでもなくネット検索からコピペしてアレンジするだけです。Naverの場合はこうした「おまとめ記事」の途中やサイドバーに記事に連動した広告が掲載され、PVに比例して広告主から運営会社(Naverの場合はLINE)に報酬が払われます。そして運営会社はその報酬の一部を記事を書いた人に支払うというビジネスモデルです。

建前上は運営会社は「おまとめ記事」を書きたい人にプラットフォームを提供しているだけということになっていますから、記事の内容には責任を負いません。つまりその記事で、コピペで著作権が侵害されていても、いいかげん情報を信じて健康被害があっても、記事の書き手と読み手の問題というしかけです。

これらのことがこの本でスッキリとわかりました。著者はDeNAが運営していて問題山積で消滅してしまった医療情報サイトWELQの事件の告発者のひとりのようです。著者は群馬大学医学部卒の医療ライターでおそらく医師免許を取得していないという経歴ですが、医学部出てもいろいろな仕事している人増えています。

ちょうどこの本を読み始めた5月の初めに「医療機関、ウェブにも広告規制 患者の体験談も禁止へ 」という報道がありました。6月1日の改正医療法で施行されるようですが、「おまとめ」問題は含まれていないようです。急発展でしくみがよくわからないネット広告の世界でもすこしずつ・・ルール作りがすすむのでしょう。査定のために医学的なことを検索して、ついついあやしい「おまとめ」に引き込まれてしまうあなた(も私も・・)、ネット広告の裏側、知っておくべきですね

それにしても暑いです。熱中症になりそうで自宅とオフィスの往復以外は外に出られません・・・。(査定職人 ホンタナ Dr. Fontana 2018年8月)

 

医療法改正についての「おまとめ」