El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

忘れられた巨人

忘却とは・・・

忘れられた巨人 (ハヤカワepi文庫)

忘れられた巨人 (ハヤカワepi文庫)

 

夫婦・親子・民族・・・どんなレベルでも人と人の間には諍いがあり、不実がある。それでも、忘却という霧が諍いを緩和したり、ごまかしを生んだりしている。忘却もまた方便なのだ。しかし忘却の霧が晴れたとき、「忘れられた巨人」が起き出し、ふたたび諍いと憎悪の世界へ。

日本とアジアの国々との間、ルワンダボスニア・ヘルツェゴヴィナ。一時は現在生活を確立するための方便に忘却のポーズをとっていても、いつか必ず、忘却の霧が晴れて憎悪が広がるときがくるのか・・・。

愛にあふれているように見えた老夫婦も最後に記憶がよみがえり・・・と余韻をもたせて小説は終わる。