忘却とは・・・
夫婦・親子・民族・・・どんなレベルでも人と人の間には諍いがあり、不実がある。それでも、忘却という霧が諍いを緩和したり、ごまかしを生んだりしている。忘却もまた方便なのだ。しかし忘却の霧が晴れたとき、「忘れられた巨人」が起き出し、ふたたび諍いと憎悪の世界へ。
日本とアジアの国々との間、ルワンダ、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ。一時は現在生活を確立するための方便に忘却のポーズをとっていても、いつか必ず、忘却の霧が晴れて憎悪が広がるときがくるのか・・・。
愛にあふれているように見えた老夫婦も最後に記憶がよみがえり・・・と余韻をもたせて小説は終わる。