El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

占領と改革―シリーズ日本近現代史〈7〉

戦争が日本を平等社会にしてくれた・・・本当か?

占領と改革―シリーズ日本近現代史〈7〉 (岩波新書)
 

1945年の敗戦から55年体制の始まるまでの10年間。ここまでの7巻の中で、自分の中の歴史認識との違いがもっとも大きいのがこの10年間だった。学校では年度末で尻切れトンボの授業でお茶を濁される部分。

まず、目からうろこは、戦時体制以前はかなり不平等な社会だったということ。貧富の差が激しかった。その不平等社会が是正されたのは戦時体制のおかげということ。総力戦体制によって社会関係の平等化、近代化、現代化が進行した・・・と。わたしにはそれまでの不平等社会への認識が足りなかった・・・というか本当か?結果論?

この自由派(資本家層)と平等派(軍部→社会主義共産主義)のせめぎあいは戦後も続く・・・と、ちょっと戦時総力戦体制を持ち上げすぎのような。

もうひとつは、「無条件降伏サクセスストーリー」。戦争の後に講和ではなく無条件降伏させて、勝者がまるで育ての親のように敗者の新国家建設を指導する、それが一見、すごくうまく行ったように見えたのが日本の占領。本当は日本人がストーリーにのっかるという前提があってこそのサクセスであったのに、アメリカは、このあと、ベトナムや中東で違う前提条件のなかで「無条件降伏サクセスストーリー」をもとめては失敗する。

「無条件降伏サクセスストーリー」は日本国内的には、独立した国としての戦争の精算をさせない結果になってしまった。このため永続敗戦論みたいな話になっている。