El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

満州事変から日中戦争へ―シリーズ日本近現代史〈5〉

戦間期ドイツの復興は中国のおかげだったとは・・・

日清日露戦争の結果、台湾、朝鮮、満州と植民地にしたり権益を手に入れたりしたわけだが、そうした帝国主義的ふるまいが許された時代は終わろうとしていた。第一次大戦後の民族自決の動きの中で、帝国主義的ふるまいと民族自決が混沌と衝突、共産主義もあり、常に変化し続ける世界のルール。一方で、戦勝により獲得したものに固執し、変化を理解しようとせず、蒋介石の予想通り世界戦争へ突っ込んでいく日本。そういった構造がきわめて丁寧に書かれている。

ドイツの中国軍事顧問団の存在の大きさもしった。第二次大戦直前のドイツの復興は蒋介石に大量の武器を資源とバーターで買わせたということか。著者のレトリックが煩瑣でこのシリーズの他の巻に比べて読みづらいが、難しい時代を多面的に叙述している。