El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

戦前日本のポピュリズム

面白さは星5つなんだけど・・

「あの戦争はポピュリズムのせい」というのもポピュリスティックかも

 確かにおもしろくて一気に読めるのだが・・・著者がセレクトしたいかにもポピュリズム的な事件の連続を読んで、無批判に「なるほどそうか」と信じてしまうこの読後感こそ、人間がいかにポピュリズムに毒されやすいかということの証左でもある。というなんだかメタな本。おもしろいだけに・・それにのっかって無批判に「よく書いてくれた」と思ってしまう自分の中のポピュリスト感覚をこそ戒めたい。

とはいえ、すべての情報にまずは批判的な態度で臨むというのも頑固爺さんみたいで・・なかなかむずかしい。著者の多数の著作を読み込んで、ポピュリズム以外の要素への考え方を理解した上での本書、といきたいものだ。著者の頭のなかでは、過去の著作の上に書かれた本書であろうが、自分も含めて、にわか読者がそこをオミットして本書だけで「なんでもポピュリズム」と思ってしまうところにポピュリズムへの陥穽がある。