詩歌に人生観を教えられ・・
古代から中世にかけての日本の詩文の本質をフランス人に講義するということで、なんといってもわかりやすく書かれているし、それだけになおいっそう細かい議論を抜きにした日本の詩文の本質が描き出されている。岩波文庫に入るにあたって附けられた池澤夏樹の解説もすばらしい。
梁塵秘抄や閑吟集もなんとなく見知った気分になれる。これらの中世歌謡についての「作者にして歌い手だった人々の多くは、次々に違う男を相手にする遊女だったと思われますが、彼女たちの人生観は、不思議なほどに、商人たちの人生観と似通っていたように思われるのです。つまり、何事によらず過度にひとつのことに執着することはせず、自分が強く愛着を感じる物や人であっても、それを失う日は必ず来ると考えて、常にその物や人と別れる心用意をし、それを覚悟しながら、現在を積極的に楽しんで生きること。」のくだりは、まさに経済性や効率化に追われている現代人の人生観たりうる・・・と感心した次第。