El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

還暦以後

これこそが定年後の指針!

還暦以後

還暦以後

 

高齢化する団塊世代をあてこんでか、老後の生活をテーマにした本がやたらに増えてきた。定年後をどうすごすか、定年後は本を読もう、死に方、などなど、うーむ、いかにも小市民的ではないか。
「還暦以後」は、そんな定年本と似たようなタイトルだけど中身はまったく違う。還暦をキーワードに歴史上の人物たちが、どのように還暦を迎え、どのようにその後の人生を送ったのか。江戸末期から戦後まで、人物相互の関係性をたもちつつまるでしりとりのように繋げに繋げた還暦後の人生27人分。
あとがきに著者自身が書いているように、途中で方向性が似通ってきて読んでいて中だるみすることもあるので、そうなったら伊藤整あたりまでいったん飛んで、やや新しい人たちの還暦後やらエロスやらを読んでリフレッシュ、そうするとまた途中の人たちを楽しむことができるようになる。
「還暦」というだけあって、また著者が幕末・明治がメインの研究フィールドであるからか、明治の改暦の前後での日付の考え方や、干支についてかなりこだわりがあるようで、最初はそれがわずらわしいが、最後まで読むとそれもまた味わいなんだと思える。
何度かは読み直したくなりそう、また文章のテンポがいいので他の著作も読んでみたくなる。