El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

脳に棲む魔物

エクソシストのあの少女も治療可能だった・・・

脳に棲む魔物

脳に棲む魔物

 

 抗NMDA受容体脳炎、聞いたことありますか?2007年に確立した疾患です。じゃ、それまでは無かった新種の病気なのか?いやいや、有史以来存在した病気でしょう。2007年までは、統合失調症の一種と思われたり、エクソシスト病と言われたりして、患者の多くは不幸な転機をとっていたものと思われます。2007年以降も、たとえば著者のスザンナのように2009年ニューヨークで発症してもほとんどの医師はこの病気の知識がなく、スザンナも統合失調症と診断されます。この病気のことを知っている医師に出会わなければ助からなかったでしょう。

日本でも事情は同じで、このネット時代でも、いやネット時代だからこそ莫大な情報に埋もれて、この病気のことを知らない医師は多いのではないでしょうか。映画「8年越しの花嫁」はその啓蒙の目的もあるようです。

そう考えると、統合失調症そのものも、科学がすすめば具体的な治療可能な原因が判明するかもしれません。医療の進歩と人間の運命を凝縮して感じさせてくれる実話です。