El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

ブックガイド(13)科学の力で悪魔祓い!?

 ——科学の力で悪魔祓い!?——

8年越しの花嫁 キミの目が覚めたなら

8年越しの花嫁 キミの目が覚めたなら

 

新年明けましておめでとうございます。「気楽に読める一般向けの本で、アンダーライティングに役立つ最新の医学知識をゲットしよう」、そんなコンセプトでブックガイド書いています。査定歴20年の自称査定職人ドクター・ホンタナ(ペンネーム)です。さて年頭ということで、2017-18年の冬休み映画「8年越しの花嫁」(佐藤健・土屋太鳳主演)の原作本を紹介します。(映画もまだやってます・・)

この映画・原作は、まあいわゆる「難病+愛」というジャンルなんですが、もうひとつの側面があります。実はこの映画、「抗NMDA受容体脳炎」という難病の存在を啓蒙するという意義があるんです。皆さん知ってましたか?、この病名。

2000年以降になって解明された疾患らしく、「抗NMDA受容体脳炎」という病名は耳新しいんですが、不肖ホンタナはこの映画を取り上げていたテレビ番組で初めて知りました、勉強不足・・・。驚いたことには、私の学生時代に大ヒットした映画「エクソシスト」(1973)のあのベッドから跳ね上がったり、首が180度以上回る悪魔憑きの女の子、あの子の症状はこの病気で説明つくらしいです。

エクソシスト」から40年たって、あれが悪魔憑きではなく自己抗体による疾患だったということが解明されたわけです。分子生物学や抗体医学の偉大な成果ですね。驚きです。適切な治療がなされれば治るということですが、臨床医でもこの病名知らない人は多いらしく不適切な治療で症状がすすんで亡くなったり重篤な後遺症が残る場合もあるらしいです。そこで、まず医師にこそこういう疾患の存在を知ってほしい!ということです。

しかし、この病気と同じように、これまで精神の疾患と思われていた-例えば統合失調症-も、研究が進めばこうして疾病のメカニズムが解明されて治る病気になってしまうのかもしれません。すごい時代です。

紹介したのは実在の患者とその夫(婚約者)が書いた闘病記に近いものですが、同じ書名で映画のノベライズ版、コミックなど種類豊富です。また、この病気のことをもっと知りたいという方には、同じ病気を克服したアメリカのジャーナリストが体験記として書いた「脳に棲む魔物」も読み応えあります。

なにはともあれ「抗NMDA受容体脳炎」、検索して勉強しましょう!(査定職人 ホンタナ Dr. Fontana 2018年1月)

関連本・サイトなど

脳に棲む魔物

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