El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

パタゴニア

どんな辺境にも・・歴史あり

パタゴニア (河出文庫)

パタゴニア (河出文庫)

 

祖母の家にあったプロントサウルス(じつはミロドンという不思議生物)の皮に導かれてチャトウィンはイギリスからブエノスアイレスへ、そしてパタゴニアを踏破する。旅の最後はミロドンの皮が見つかった最南端に近い洞窟だ。

パタゴニアはヨーロッパや北アメリカを追われた者たちが流れ着く不毛に近い大地。そこで、ウェールズ人やブッチ・キャシディが生きる。インディオも生きる。共産主義革命の時代には左右のぶつかりあいにより右も左も翻弄されて生きる。最果ての地でも政治とは無縁どころかみょうに増幅されもする。そんな昔の物語が旅の途中に散りばめられる。

パタゴニアのもう一つの顔は、その南端がパナマ運河以前の大西洋と太平洋をつなぐ航路だったということ。多くの船乗りが命がけの航海でのりきらねばならぬ場所。その記録がすこぶる面白い。祖母のいとこの船乗りが大活躍。彼がミロドンの皮を手に入れることになった洞窟へとチャトウィンの旅は続く。

さまざまな時代にさまざまな人間たちが関わったパタゴニア。美しい自然に恵まれたところ・・・と思っていたが、やはり人間どもの歴史の場でもあったと。