El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

日本の少子化 百年の迷走

ベビーブーム急停車の時代背景がよくわかる!

団塊の世代をうんだ戦後のベビーブームの急ストップが優生保護法による堕胎と避妊の国家的奨励によってもたらされたという事実がよくわかり資料的価値が高い。GHQによる陰謀論に入れ込み過ぎている感もあるが、戦争直後の人口の急増と慌てふためく社会、フェミニズム論者の女性保護意識、さまざまな要素が取り上げられて、忘れらされていきつつある戦後の世相を伝えてくれている。未来の人口予測をもとに政策をたてる場合、その予測の結果が判明するまで何十年もかかるために、政策に恣意性を持ち込める(つまり自分のいいように予測を解釈できる)ことから、政策が右往左往するというメカニズムもよく書かれている。医師議員や産婦人科医による利益誘導的な優生保護法改正があったことも示唆されている。あの頃の日本は帰還軍医であふれていたのもまた事実。著者のこの先の少子高齢化にたいするペシミスティック一辺倒な見方は、結局それまでの政策の右往左往に通じるもののような気もして、著者は最後の部分で、やや感情的になったのかな・・と読んだ。