El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

旅愁

 Kindle横光利一を読む一週間に

旅愁

旅愁

 

 旅愁」(Kindle本)。大部なものなのだろうがKindle本でこの長編を読みおえた。ヨーロッパ・ソビエト・日本・日本の中の郷里、タイトル通り「旅の愁い」は様々な形をとって表現される。日本に戻ってきての違和感もまた旅愁ということだろう。自分たちのヨーロッパ旅行における感想とたいしてかわらないなあ、という印象。

主人公の結婚がらみのごちゃごちゃした心理描写は時代の違いを感じさせる。最後が日中戦争の始まりで、彼らの旅愁もすっかり押し流されたように終わる(未完のままらしい)。敗戦後の25年に出版されている。