El librero la Fontana・ホンタナ氏の本棚

人生の最後を一番美しく過ごすのは、いつの日か、田舎、といっても町からあまり離れていないところに隠居し、今までに愛読した何冊かの本を、もう一度、書き込みなどしながら読み返すことだ。           (アンドレ・モーロワ「私の生活技術」より)

ヴァレリー――知性と感性の相剋

ヴァレリー、あんたもか!?

ヴァレリー――知性と感性の相剋 (岩波新書)

ヴァレリー――知性と感性の相剋 (岩波新書)

  • 作者:清水 徹
  • 発売日: 2010/03/20
  • メディア: 新書
 

 ムッシュー・テストなどで読んでいて膝を打つこともあれば???となってしまうこともあり、ヴァレリーについての解説本を読めばいくらか理解がすすむかもしれないと思い読んでみた。ちょっと下品な言い方だが率直な感想は「結局モチベーションは性愛か!」というのが第一。もちろんそう単純ではないことはわかっている、もちろん知性も優れている。しかし、特に老年期に入ってからは、若い女性へのわりとわがままな欲望の発露がエネルギー源になっていることは確か。「ヴァレリー、あんたもか!」と親近感を抱くとともに、そのエネルギーを詩など作品に昇華できるところが、ヴァレリーヴァレリーたる所以であり、雌伏期にカイエで培った才能、つまりは「若いときにとった杵柄」ということなのかしらとも。
世のちょっと知的だけどだんだん歳をとって女性に対するパワーが落ちてきたというオジサン達はこの方向に精進するということはある(知性をみがいて女にもてよう!)。・・・あるいは、女性に恋をするという方法で若さや創作意欲を保つ「方法」を人生で身につけていて、老年期の行動がなかば意識的であったとしたらそれこそ「方法的制覇」だったりする。一方、ヴァレリーの本妻の気持ちがまったくわからないのが不気味。まあフランス的とはこういうことか。

日本人ならせいぜい「先生のカバン」ですね。